研究開発?知的財産
積水化学グループにとって、価値創造の根幹は、際立つ技術にあると考えています。中でも、住インフラ分野とケミカルソリューション分野に強みを持つ技術プラットフォームがその土台となっています。この技術的な際立ちを持続させるために、研究開発やモノづくり、さらには知的財産の分野において人員、組織の両面で継続した強化を進めています。
研究開発
研究開発に対する考え方
積水化学グループは、グループビジョンの実践が中期的な経営戦略の骨格であり、100年経っても存在感のある企業グループであり続けることを目指しています。2017年度からスタートした中期経営計画「SHIFT 2019 -Fusion-」は、その実現に向けた「新次元の成長」への第一歩と位置づけ、「技術の融合」による新事業創造の加速を重点課題の一つに設定しています。社内および社外との技術の融合を積極的に推進し、新市場?新分野での事業化の加速と、その次を見据えた魅力あるテーマの創出に取り組んでいます。
積水化学グループの基幹技術
研究開発のベースとなるのは、グループビジョンにある2つの事業領域「住?社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」に関連するものから6つの基幹技術を定め、さらに、より具体的なソリューションに近い25の技術プラットフォームです。これらの技術プラットフォーム一つひとつを磨き上げると同時に、複数のプラットフォームを組み合わせることで、新市場?新領域を開拓できるような製品?サービスを開発していきます。
研究開発体制
住宅カンパニー、環境?ライフラインカンパニー、高機能プラスチックスカンパニーの3カンパニーおよびコーポレートに4つの主要研究開発拠点を、また積水メディカル株式会社など主要関係会社にも独自の研究所または研究開発部門を設けています。
カンパニーの研究開発では既存事業の強化およびフロンティアの開拓に直結し、近未来の収益につながる製品開発、生産技術テーマを手掛けています。一方、コーポレートでは独立した研究組織として、技術的なハードルが極めて高く中長期的な時間軸で取り組むべきテーマ、カンパニーをまたぐ業際の橋渡しとなるような大型テーマ、これまで取り組んだことのない新しい事業領域のテーマなどの研究を行っています。
社内外との技術の融合による
事業の創出?拡大
新規の開発などを中心とした育成?創造テーマについて取り組んできた“協創”の取り組みを一段進化させ、既存事業も対象に技術、事業機会、経営資源を「融合(Fusion)」し、社内外の連携を強化することで成長の加速を図ります。
「融合」による開発テーマ例
- ?高性能内装材
- ?熱可塑CFRP
- ?フィルム型リチウムイオン電池
- ?フィルム型色素増感太陽電池
- ?まちづくりプロジェクト
- ?タウンエネルギーマネジメントシステム
モノづくり革新
モノづくり革新に挑む現場力
新製品開発につながる研究開発だけでなく、既存製品の競争力強化にもつながるモノづくり力の強化にも取り組んでいます。
中期経営計画「SHIFT 2019 -Fusion-」では、モノづくり力に関連する方針として「モノづくりリスクの極小化とモノづくり新時代への対応力強化」を掲げました。その重点施策の一つであるモノづくりリスク低減文化の構築として、設備の本質安全化、安全人材育成の徹底推進、CS品質情報ナレッジシステム構築などによるCS品質基盤の強化を推進していきます。さらにモノづくり力の継続強化として、生産技術力の定量化による技術力強化とともに新技術導入(ICT化、自働化)を行っていき、同時にこれまで取り組んできたモノづくり人材育成を通じ、モノづくり基盤力をさらに強化していきます。
知的財産
知的財産戦略の目的と基本方針
研究開発活動の成果としての「知的財産」は、企業価値の最大化に向けて、積水化学グループの成長?収益を支える重要な経営資源となります。そこで当社グループでは、技術の「際立ち」を最大限に活かすため、知的財産戦略を重視しています。
「知的財産規則」では、知的財産管理の目的を「自他の知的財産を尊重し、知的財産に対する取り組み、その取り扱いおよび手続きなどを明確にすることにより、知的財産の創造、保護、活用を奨励し、事業の成長と企業価値の向上に寄与すること」と定め、「強い特許の獲得による事業競争力の確保」を基本方針としています。
知的財産中期計画(2017年3月策定)
戦略性の高い特許群を継続的に創出させるとともに、戦える強い知的財産人材を育成することで、経営に貢献することを目指しています。
1.戦略知的財産活動の推進
ビッグデータ解析技術の進化によりますます高度化する知的財産情報分析ツールを活用して、競争環境を詳細に分析します。その結果に基づいて、開発着手前に勝ち切る知的財産戦略を立案し、効率的な研究開発の実行と新規事業の成功確率の向上に貢献します。
2.知的財産部員の育成加速
開発や企画部門とのローテーションや海外特許事務所への駐在を経験させることで、知的財産部員の技術力?企画提案力やグローバル対応力の向上を目指します。
知的財産戦略の推進体制と主な取り組み
判断、意思決定のスピードアップのため、コーポレートと各カンパニーに知的財産部門を設けています。
コーポレートの知的財産部門の役割は、全社共通の基本的知的財産戦略の企画?立案から知的財産教育、そして特許管理システムの運用?管理です。知的財産の意識向上のため、コーポレートが主体となって、研究開発?営業に対して知的財産に関する教育を計画的に行っています。また2017年度更新の特許管理システムでは群管理を可能とし、戦略的な特許群構築のプラットフォームを導入します。
一方、各カンパニーの知的財産部門の役割は、各カンパニーの事業環境に即した独自の知的財産戦略を構築し展開することで、知的財産部門と事業部門、研究開発部門が定期的に「開発知財戦略会議」を開催し、戦略的な特許群構築を目指して活動しています。
このように、コーポレートと各カンパニーの知的財産部門が有機的に連携することで、知的財産レベルの向上に努めています。
特許
積水化学の特許出願第1号は、創業翌年の1948年に出願された「皮膜形成ペースト製造法」(気球や風船用の強靭な膜)で、1950年に登録され特許権第1号となりました。当初、特許などの出願?管理業務は技術部が他の業務と兼任で行っていましたが、年間100件を超える出願をするようになったことから、1954年に技術部内に特許課が創設され、工業所有権業務を専任で担当することになりました。
現在、積水化学グループでは、コーポレートと各カンパニーの知的財産部門が中心となって、全社共通の基本的施策の展開から特許の取得?管理そして権利活用まで一貫した体制で知的財産戦略を推進しています。各カンパニーにおいて知的財産部門と研究開発部門が定期的に「開発知財戦略会議」を開催し、カンパニー独自の知的財産戦略は、その中で検討され、方向付けがなされています。そして同時に、コーポレートの知的財産部門は、知的財産ポートフォリオの最適化という全社的な事業戦略の見地から、各カンパニーの取り組みを支援しています。また、知的財産の取得?管理そして権利活用を適切に進めていくために、特許事務所や法律事務所など、外部の専門家との連携も積極的に図っています。特に、事業のグローバル展開の拡大を視野に入れ、国内のみならず海外の専門家との連携も積極的に進めるとともに、現地での知財活動を推進する人材として外国人知財部員を採用して育成しています。
商標?ブランド
積水化学グループは、長い歴史の中で「SEKISUI」ブランドを築き上げ、その事業活動地域は国内のみならず、海外にも拡大しており、グローバル企業としてさらなる飛躍を目指しています。
2009年にグループロゴ「SEKISUI」をグループ全体のシンボルマークとして位置付け、国内外で統一的に展開しています。各事業活動地域ごとに「SEKISUI」を商標として権利化し、ブランドの保護と価値向上のための活動も推進しています。
また、「セキスイハイム?」や、「S-LEC?」 「エスロン?」などのカンパニーブランドおよび事業?商品(製品)群ブランドのロゴは、事業展開?商品上市の際に体系的に使用し、積水化学グループの製品をお客様に安心して選んでいただくため、その技術?性能を表示するものとして機能しています。
今後もグループロゴを中核としたブランド戦略を通じて、積水化学グループブランドのグローバルな保護と価値向上に取り組んでいきます。
「SEKISUI」ブランド管理?保護へ
の取り組み
積水化学グループでは、従業員が「SEKISUI」ブランドを理解して正しく使い、ブランドの価値向上を図るために、「視覚標示基準(Brand Book)」を策定し、グローバル規模で運用しています。さらに、策定したルールを順守するために、従業員への“「SEKISUI」ブランド”に関する教育にも注力しています。
また、ブランドを毀損する模倣品などの商標権侵害に対しては、監視?対応を強化しています。特にアジア地域を中心に積極的な対策活動を継続しています。今後も模倣品に対しては、断固たる姿勢で対応していきます。
事例紹介
- 自然に学ぶものづくり研究助成プログラム自然保護?社会貢献活動の一環として実施している「自然に学ぶものづくり研究助成プログラム」は、自然の原理を利用した最先端技術を生み出す可能性を秘めており、最近では研究成果を事業に結びつけるべく取り組みをすすめています。
- SPR工法が「大河内記念賞」受賞(自社開発と外部の知識?技術との連携)過去に数多くの先端技術を導入して当社独自の際立つ技術に仕上げ、自社開発に限定せず産官学連携を活用した先端技術の創出に力を入れています。例えば生産工学上優れた独創的研究成果に与えられる「大河内記念賞」を受賞した管路更生「SPR工法」は、国内の下水サービス会社と建設会社との3社共同で開発したものです。近年では、グローバルなM&Aや他社とのアライアンスなどを活用することで、経営戦略の推進と目標達成に必要な技術力の補完を図っています。
- 塗工プロセスによる大容量フィルム型リチウムイオン電池の開発積水化学グループは、これまで培ってきた高機能フィルム技術を武器として革新的な環境製品の創出を進めてきました。特にエネルギー材料?デバイスについて注力しており、2012年から、新エネルギー?産業技術総合開発機構(NEDO)が実施している「リチウムイオン電池応用?実用化先端技術開発事業」の支援を受けて、革新的で挑戦的な開発に取り組んでいます。
- 室温プロセスでフィルム型色素増感太陽電池の試作に成功産総研などと共同で、エアロゾルデポジション法(セラミック材料の常温高速コーティングプロセス方法「AD法」)を活用し、従来の高温焼成を不要とし、世界で初めて室温プロセスでのフィルム型色素増感太陽電池の試作に成功。産総研のAD法技術と、積水化学の微粒子制御技術?多孔膜構造制御技術?フィルム界面制御技術を駆使し、光電変換層とフィルムの高い密着性と良好な電子輸送性能を実現することで、有機フィルム上の色素増感太陽電池としては世界最高水準の8.0%の変換効率を得ました。さまざまなフィルム基板を用いた色素増感太陽電池が製造可能となり幅広い用途が期待されます。
- 不燃ポリウレタンフォーム「PUXFLAME」不燃ポリウレタンフォーム「PUXFLAME」は、耐火材料事業の難燃化配合技術を駆使して開発されたものです。一般的な硬質ウレタンフォームは加熱されると一気に燃え広がりますが、加熱時に発現する特殊な炭化層により酸素と可燃ガスの結びつきを遮断し瞬時に延焼を抑制する構造となっています。
- 世界初の「熱可塑CFRP炭素繊維強化プラスチック)連続異型成形技術」粘度の高いプラスチックでも炭素繊維に容易に含浸するよう束状の炭素繊維を一本ずつバラバラにする独自技術(開繊技術)を開発。またパイプやフィルム等で培われてきた押出成形技術を発展的に活用し、炭素長繊維と熱可塑性樹脂の複合連続押出成形技術を開発、長尺?大型化が容易になるとともに高生産性を実現しました。さらに特殊リブ構造を連続?同時に成形できる異型成形技術を開発により、高強度化と軽量化の同時実現が可能となりました。
- タウンエネルギーマネジメントシステム茨城県つくば市の分譲地「スマートハイムシティ研究学園」で、居住者および東京電力パワーグリッド株式会社の協力のもと、家庭用蓄電池を連携したバーチャルパワープラントの実証試験を実施しています。
- “ごみ”を“エタノール”に変換する世界初の革新的生産技術を確立積水化学工業と米国ランザテック社は、収集された雑多なごみを一切分別せずにガス化し、それを微生物によりエタノールに変換する技術に世界で初めて成功しました。エタノールはプラスチック製品の原料のエチレンに変換することも可能で、ごみの再利用による化石資源の代替だけでなく、CO2排出抑制にも貢献できると考えています。